ベンチャー企業への転職で失敗しない為にはどうしたら良いと思いますか?
20代でベンチャー企業への転職をする人は多く、その一方で離職する人も多くいます。そういった背景には、ベンチャー企業の特徴や中身をあまり理解せずに、良いとこだけを見て転職してしまったという理想と現実のギャップが原因としてあります。
お洒落なオフィス、充実した福利厚生にプライベートとの両立。
ベンチャー企業に対してこういったイメージを持ってはいませんか?
20代でベンチャーへの転職を考えている人の中にはベンチャー企業は華やかといったイメージを持っている人がいます。ベンチャー企業には成長ステージというものがあり、全てのベンチャー企業が最高の環境とは限らない為、それを知らないまま転職するのは危険です。
なんとなくのイメージでベンチャー企業へ転職を考えている人は、まずはベンチャー企業の4つのステージについてしっかり理解しておきましょう。
ベンチャー企業の4つのステージとは?
ベンチャー企業は、企業の成長の段階にあわせて4つのステージに分かれています。
- シードステージ
- アーリーステージ
- ミドルステージ
- レイターステージ
それぞれのステージについて解説していきます。
1.シードステージ
シードのステージとは、設立前の準備段階の事です。設立直後の事を言う場合もありますが、そういった場合でも、経営という意味で考えるとまた準備に等しい段階になります。
どの企業であっても、必ず通過点としてシードステージがある訳ですが、この段階ではまだ売上利益はゼロだと思ってください。
これから本格的にビジネスを展開し経営するなかで、どのような事業を軸に展開していようとするのか、どのような商品やサービスでビジネスモデルを構築しようとしているのか、マーケティング含めて検討段階にあります。
経営にはPLとBS、そして事業計画が必要になるため、この段階ではこれらを作成したり金融機関から借り入れを行う時期です。
20代の転職希望者としては、シードステージのベンチャー企業に転職するということはありえるのか?という素朴な疑問を持つでしょう。
シードステージのベンチャー企業は売上利益ゼロですので、中途採用をしても給料を支払うことが難しいです。その為、採用することはないのではないかと思うかもしれません。ですが、売上利益はゼロであっても資金調達にさえ成功すれば給料を支払うことはできるので、転職エージェントでは、そういったシードステージのベンチャー企業の求人もありますし、転職サイトにもあります。
シードステージではハードワークが普通
シードステージの段階でも20代の人材を募集しているのは、単純にハードワークに耐えられる若さとパワーを必要としているからです。
この時期のベンチャー企業はかなりのハードワークで寝る間もないぐらい仕事に時間を費やすことが多くなります。
むしろこれが日常業務とも言える為、若いエネルギーがどうしても必要になってくるのです。
転職市場では、「若いうちから人より成果を出したい」「早く出世して経営陣として経営に関わりたいという」ハングリーな20代はたくさんいます。
このような人材タイプが転職市場にいることをシードステージのベンチャー企業は知っていますから、採用したいと考える訳です。
シードステージでは、仕事への情熱はもちろんのこと人間としての基礎的な体力も必要です。体育会系ではないのですが、この時期は体力がものをいう世界だと思ってください。
昼夜問わず、寝る間も惜しんで仕事に没頭することが日常なので、体力がなければ続かないでしょう。また、純粋に仕事が好きでなければ務まらない時期でもあります。
趣味が仕事という20代もいますので、そのような人はシードステージのベンチャー企業は狙い目だと思います。
転職のデメリットはかなりのハードワークでプライベートがないことですし、経営が不安定ですのでいつ倒産や給料遅配があるか分からないことですが、ハイリスクの分、経営が順調に回転すると創業メンバーとしての恩恵を受けることができます。
20代のうちから役員として経営に携わることもできるでしょうし、普通の企業で働いては一生かけても得られない月収や年収を手にすることもできます。
2.アーリーステージ
アーリーステージは、企業後2年、3年程度の期間の段階だと思ってください。
シードステージほどの不安定さはありませんが、それでも不安定であることは間違いないです。
事業計画通りに事業が少しずつ成長しつつある段階ですので、売上利益のモデルは完成しているということは言えますが、この段階での企業の利益はまだ微々たるものと思ってください。
アーリーステージでの売上利益から給料を支払う余裕はまだなく、借入や自己資金を元手に支払っていくというのがほとんどだと思います。
従業員数としては、創業者を含めると5人、10人ぐらいの規模で従業員もなるべく人件費を抑えるために、主担当以外は派遣やアルバイトなどの非正規であることを想像しておいてください。
スキルアップできるが倒産リスクもある
アーリーステージでは設備投資や研究開発などに多額の資金を必要としてきます。会社の規模は、売上高が2億円以下で従業員も10人以下の発展・成長途上の企業がこのステージに該当してるといえます。そのため従業員と経営者の距離もまだとても近いです。
シードステージ同様に経営者との距離感もかなり近いため、自身が経営陣ではなくても経営者とともに会社を経営する感覚を養うことができるでしょうし、経営に関する知識やスキルを身に付けることもできるでしょう。
経営者と二人三脚で会社を運転していく自分事として考えることができる時期だと思います。
立ち上げた事業が回転しつつある時期でもあり、会社としてはもっと拡大したいと考えるため投資のために借入が増える時期でもあります。
借入と聞くと多少言葉がきれいに感じるかもしれませんが、簡単に言えば借金です。投資しても絶対に拡大成功する保証はありませんし、失敗すれば借金を返すことができないため、起こりえる事態として倒産や給料遅配も想定できます。
シードステージほどのリスクはありませんが、アーリーステージも転職にはリスクが大きいため、このあたりのことも考えて慎重に転職活動を進めていきましょう。
3.ミドルステージ
経営としても事業としても軌道に乗り出し、コンスタントに事業で売上利益を生み出す力をつけてきている時期がミドルステージです。
恐らく20代の転職希望者にとってのベンチャー企業は、ミドルステージにある企業のことをイメージしているのではないかと思います。
企業としては成長期にあたり、固定顧客も増え今すぐに倒産などのリスクがあるということはなく、シードステージなどで借入した分も計画的に返済できている段階です。
資本金も増資し、従業員数も50名~100名、企業によってはもっと多い従業員数を抱えるぐらいになっている時期でもあります。
整備することができなかった福利厚生などの社内制度も徐々に完備されつつあり、企業に在籍している事への満足度も高いです。
経営者との距離感もまだ近く、直接ブレストを行える環境もあるでしょう。
このステージにあるベンチャー企業へ転職することができれば、寝る間も惜しんで仕事をするということはなく、ある程度プライベートも確保することができる環境になると思います。
このステージに転職をした場合、シードステージやアーリーステージのように役員になるチャンスはそう多くありません。
確かに成果に応じて20代にしては高い報酬を手にすることはできますが、シード・アーリーステージのような桁が違う金額は難しいと考えてください。
この時期になると多くのベンチャー企業は、ホールディングス化を考えます。
事業ごとに会社を作り、ホールディングスとして連結的なシナジーを生むことを想定します。
その分、どのようなメリットがあるかと言うと、関連子会社の経営者になれる機会もあるということです。
ポジションとしてかなり空席がありますから、成果を出せば早い出世も可能だと言えます。
4.レイターステージ
このステージは、大手企業に近い盤石な経営が行われていて、従業員数もかなり多くなっています。企業にとって大きなキャピタルゲインを得るターニングポイントであるIPO(株式上場)を意識し始める時期です。
なかには上場を目的に起業していないという経営者もいますが、多くの経営者は株式上場を起業の大きな目標としています。
上場することで資金調達をしやすくなります。それだけでなく、日本の株式市場に株を公開することで社会的な信用も得られますし、企業の知名度も一気に上がります。
組織が大きい分ポジションはそれほど空いているということもありませんし、ベンチャー企業への転職のうま味でもある年齢が若いうちから事業企画などの裁量の多い仕事をすることができるということもあまり多くはないと思ってください。
感覚的にはベンチャー企業への転職でも大手企業への転職ぐらいの感覚を持っておいた方が、転職後にギャップはなくなると思います。
レイターステージでもベンチャー企業であることに変わりはありません。
歴史が深い企業によくある年功序列といった人事制度ではなく成果主義を導入していますので、どれだけ成果を出しても年間通して数千円しか昇給しないというようなことはないでしょう。
組織としてオーガナイズされている時期でもありますので、多くの部署や業務を横断的に経験することができるというよりも1つの職種に複数年ぐらいは担当するということが基本線だと思います。
ステージをしっかり把握しておくこと
以上、4つのステージについて説明しましたが、実はこのステージはかなり重要です。当然のことながら、転職先の企業に求めることはあると思いますが、漠然とベンチャー企業を希望するというだけでは正直不安が残ります。
同じベンチャー企業であってもそれぞれのステージで働き方や社内環境は大きく変わってきます。
そこを考えずにベンチャー企業すべてを一括り考え転職活動をしていると、働く前と実際に働いてからのギャップを感じてしまう事になります。なので、ベンチャー企業への転職を考えているのであれば、どのステージの企業に転職をしたいのかまで転職活動前にはっきりとした希望を作っておくことをお勧めします。
ベンチャー企業への転職方法
20代でベンチャー企業への転職を希望するのであれば、何と言っても転職エージェントを利用することがベストな選択だと私は思っています。
基本的に、20代であれば業界業種問わず転職エージェントを利用するのが良いと言い続けているのですが、ベンチャー企業の場合も多くは転職エージェントを利用して採用活動を行っていますので、当然ベンチャー企業の求人が転職エージェントに多くあるということになります。
どんな転職エージェントでも良いのかということになりますが、できれば大手の転職エージェントを中心に転職活動をして欲しいです。
特に、IT業界のベンチャー企業を希望する20代の転職希望者にとっては大手の転職エージェントを利用することは必須に近いことだと認識して欲しいです。
IT業界は大手の転職エージェントに優先的に求人を依頼します。また、一部のITベンチャー企業は、優秀な人材を少しでも早く多く採用するために通常、成功報酬率が30%ぐらいのところを100%の率で支払う契約をしています。
転職エージェントは民間の企業ですから、当然ながら30%の売上よりも100%の売上の方が良いです。
仮に内定時の年収が500万円だとして、大手企業は30%、ベンチャー企業は100%の成功報酬率だとします。
転職エージェントが大手企業の採用支援を成功させた場合、500万円の30%で150万円の売上ということになりますが、ベンチャー企業の採用支援を成功させた場合、500万円の売上を得ることになります。
転職エージェントにとって成功報酬率はかなり重要で、IT業界のベンチャー企業は、その他の企業との差別化を図るためにこのような採用支援契約を転職エージェントとしているのです。
ベンチャー企業の採用活動の脅威としている競合は大手企業です。20代の転職希望者は、安定志向を求めて資金面で安定感がある大手企業への転職を希望する傾向にあります。そうなると転職エージェントを利用しても母集団形成があまりできないということで、優秀人材のロストに繋がります。
大手企業に候補者を紹介させず自社でその人材を採用するための手法として、成功報酬率を100%に設定しているのです。
転職エージェントを利用すればベンチャー企業へは転職しやすい
転職エージェントを利用して転職活動をした方がベンチャー企業へは転職しやすいです。
転職活動開始から1カ月、2カ月程度で内定を勝ち取ることができるのではないでしょうか。
転職市場の平均的な転職活動期間は3カ月~6カ月になっていますので、平均よりもかなり短い期間で転職活動を終えることができるということです。
それほどベンチャー企業は20代を積極的に採用したいと考えていますから、ニーズが高いということです。
アーリーステージからミドルステージにかけてのベンチャー企業の場合は、特に気力・体力が充実しハードワークにも十分耐えることができる20代の活発な人材を求めています。
経営者が若い分、組織全体の平均年齢も若いため、20代の若い力を欲しているのです。
また、20代の転職希望者に対して経験がないことをデメリットだとも考えていません。
経験というものは確かにビジネスでは重宝しますし即戦力として活かせますが、経験が原因で発想力がなくなったり、プライドが邪魔して柔軟性に欠けるといった一面もあります。
ベンチャー企業は、大手企業では生み出すことができない新しい商品やサービスをマーケットに創造し大手企業を上回ることを考えています。
30代以降の経験が豊富な求職者を採用するということも間違えてはいませんが、20代の発想力をかなり期待しています。
そのため、入社月から即戦力として考え事業企画や商品企画を担当させたりもします。
その分、プレッシャーもあり大変な部分もあるのですが、それをやりがいと感じることができる20代にとっては最高の環境をもらえると思います。
ベンチャー企業への転職は20代にとってはチャンス
転職市場において、転職活動において普通は絶対というということはありません。
しかし、例外的にベンチャー企業に転職を希望する20代の転職希望者だけに限っては絶対に近いものがあります。
転職活動に真面目に取り組んでさえいれば、さほど苦労する事なく転職を決めることができると思います。
注意点は、お伝えしたように同じベンチャー企業でもステージにより企業の状況は変わるということ。自分の求める労働環境を明確にしておく事は必須です。
自分の働きたいを思うベンチャー企業はどういった企業なのか、それをしっかり定めたうえで転職活動をしていきましょう。