「働きながら転職活動をするのには限界があるな...。休みも応募先と被ったりしちゃうし」
「もうこんな仕事やってられない。辞めて新しい仕事を探そう。」
色んな理由から、退職前ではなく退職後に転職活動を始めようとしている転職希望者は多いです。
でも、ちょっと待って!
その転職、失敗しますよ?
私が今まで多くの転職支援や企業の人事として面接を行ってきた経験でいえること、それは、
転職活動は仕事を辞める前にするべき
という事です。
なぜ退職前に転職活動をした方がいいのか、その理由を3つに分けて書いていきたいと思います。
今回は、20代の求職者に特化した形で、離職して転職活動をするとどんなことが起こりえるのか、また、だからこそ現職に在籍して転職活動をすべきだという私なりの意見などもお伝えできればと思います。
理由1.転職活動は予定通りには進まない
20代の転職希望者には、ストレスからくる仕事を辞めたいという感情や周りの意見に流されたりするなど、転職に対する考えの甘さなどが顕著に見られます。
自分ならすぐに転職先が決まると思い込み自己判断で企業を退職したものの、転職活動が思うように進まずなかなか次の職場が決まらないという人は少なくありません。
現職に在籍しながら転職活動も並行して行うということは、自分が思う以上に精神的にも肉体的にも堪えます。
1日は24時間しかありませんから、それまでの生活スタイルに更に転職活動に時間を費やすということは、その他の時間を制限したり我慢しなければならないということを意味します。
こういった理由から、求職者の中にはこの苦痛とも言える環境から逃れたいということで、一気にそれまで勤めていた企業を退職して転職活動1本に専念しようとする人もいます。
転職活動には答えがありませんし、求職者が自分の考え通りに活動すればそれはそれで良いのですが、転職活動をしても必ずいつまでに転職できるという確約はだれにもありません。
求職者を選ぶか選ばないか決めるのは、応募者ではなく企業だからです。
離職して転職活動に専念しようとする求職者のタイプとして、転職に対して甘い考えを持っていたり自分に対して自信過剰になっている人が多いですが、転職活動をするにあたってそういった考えは絶対にもってはいけません。
理由2. 経済的余裕が無いと転職の判断を誤りやすい
無職期間中は、精神的な負担も大きいです。
その期間が長くなればなるだけ気持ちが落ちたり、人によっては働く意欲をなくします。
勢いで会社を退職しそれから転職活動をした場合、生計維持に必要な給料を稼ぐあてがなく状況によっては無職で貯金なしという危機的状況に陥る場合もあります。
最初は1カ月、2カ月程度で転職できるだろうと見込んでいた20代の求職者も、自分に適した求人が思う以上に少なかったり、または、企業の選考状況が芳しくない場合などで当初の計画が一気に崩れたりするのはよくあることなのです。
「仕方ない、しばらくは節制して貯金生活だ!」
と、前向きに考えようにも20代の求職者にどこまで貯金生活できるだけの蓄えがあるでしょうか。
前職が上場したとか株で稼いだなどなかなかレアケースである出来事がない限り、通常の20代の求職者であれば企業に数年しか在籍していませんし、それほど高い給料を得ているということは想定できませんので、半年貯金生活できるかどうかぐらいのものでしょう。
そもそもとして、貯金に手を付ける生活は想定していなかったはずでしょうし、貯金が日に日に少なくなっている状況を目の当たりすると今度は追い込まれた感覚になります。そうなってくると、転職の目的が
「やばい!希望にこだわるよりも、まずは職探しだ!」
といった方向にブレてしまい、もうその転職活動は無意味に近いものになってしまいます。
転職活動には誰しも自分の転職希望条件や転職軸があると思います。
自分にとって興味があったり、自分がやってみたい業界や職種に転職するからこそ、その転職は満足し転職後も大きな不安や不満を持つことなく在籍し続けることができます。
条件にこだわりなく、早く職に就かなければ生活できないという状況と考えに陥ると、給料がもらえる企業ならどこでも良いという結論に至ってしまいます。
たとえ条件へのこだわりが強かったとしても、金銭的問題から日常生活にゆとりがなくなってしまえば、結局はすぐに働ける企業選びにシフトせざるを得なくなってきます。
そんな状況に陥っても、20代の求職者の場合は
「まだ20代だし、今回の転職は満足しないとしても次の転職活動に期待しよう!」
という変に前向きになるケースが非常に多いです。
20代の求職者に説教をするつもりはありませんが、転職エージェントとして多くの20代の求職者の転職活動状況を見てきた私から1つ言わせてください。
あなたがこれからする転職は単発ものではなく、その後の転職にも大きく影響しますし、自分自身のキャリアとは転職も含めてのものです。
今回の転職では職探しを一番に考え、次に転職する場合は今回のような失敗はしないと決めたとしても、今回の転職活動がその後の転職活動に大きな影響を与えることをよく理解しましょう。
無職で貯金は無くても生活はできるという恵まれた環境を持つ20代の求職者がいます。
その恵まれた求職者とは実家暮らしの人です。
自分に給料がなくても家はある、ごはんも出てくるということで、実家暮らしの人はある程度のんびりと転職活動ができます。
後にも書きますが、無職期間が長いことによる企業のイメージ悪化を考えないのであれば、実家暮らしの20代の求職者は無職でも良いのかもしれません。
でも、学校を卒業してこれから親孝行をする立場が、親から面倒を見てもらうという環境をどう思いますか?
なるべく親の援助は受けたくないですよね?
理由3. とりあえずでの転職はすぐ辞める
とりあえず転職というスタンスで選考難易度が低い企業や人気がない求人企業に応募して無事に転職することができ、無職期間を回避したとしましょう。
その瞬間だけみれば無職で給料がなく貯金を使う必要がなくなりますので、無職時代の課題は解決できているでしょう。
実際に転職してみて、どうなるかです。
ある意味適当に企業選びをして職にありつく感覚で転職した企業が、たまたま運よく自分に合っていたという可能性も否定できませんが、その可能性はかなり低いです。それに、それはただの結果論でありその後の自分にプラスとはなりません。
私の転職エージェントとしての経験上、場当たり的に適当に転職を決めてしまった20代の求職者は、転職後にすぐ退職を決意しています。
私が転職支援したなかで最短は1日です。
転職初日に自分と全く合わないなどと言う理由で退職を決意するではなく退職してしまっています。
職歴とは、1日でもその企業に在籍すると履歴として残ります。
余談ですが、職歴の定義は自分がその企業の社会保険に加入したかどうかになりますので、企業がまだ社会保険加入の手続きをしていない場合は、職歴としてカウントしなくても問題ありません。
が、自分の社会保険を企業側がいつ加入手続きを取るか自分ではコントロールすることはできませんから、他力本願であり本当の意味で運しかありません。
今ご紹介した1日で退職した求職者の場合は、運良く社会保険加入手続きがされていなかったので、更に無職で転職活動をすれば良いのですが、それでも無職であることは変わりなく、精神的不安のなかで転職活動をしなければならないのです。
とりあえず転職という思考は、リスクがかなり高い判断ですから極力控えて欲しい判断であり、そうならないためにはやはり転職先が決まるまで今の企業に我慢して在籍しておいた方が良いです。
転職活動に専念したい場合、給料補填となる制度がある
私がここまで離職してから転職活動をすると大きなリスクがあると主張しているにもかかわらず、企業を退職して転職活動をしたいと考える20代の求職者もきっといるはずです。
単なるわがまま範疇以外の場合もあるでしょう。
例えば、今の企業がブラック企業で在籍していると病気になってしまいそうという場合などです。
やむを得ない場合もあるかと思いますので、その場合、20代の求職者に簡単に貯金に手をつけずに転職活動をすることができる方法をご紹介します。
大きくは2つありますが、どちらも社会保険を効率的に使うということです。
失業保険を活用する
失業手当とは一般的な呼び名で、正式名称は、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)と呼びます。
失業手当とは、企業に在籍している人であれば一定の条件に満たない場合を除き絶対に加入している雇用保険の1つの制度です。
「僕は雇用保険に入った記憶がない!」、「私は雇用保険の加入条件に入っているのかな?」と思う人もいるでしょう。
20代の求職者によくある話なのですが、ビジネス経験が浅いことに比例して、自分が労働者としてどのような保険に加入しているのかなど一切把握していない傾向があります。
雇用保険がよく分からない人は、自分の給料明細の控除欄を見てください。
住民税や所得税も控除さえていると思いますが、雇用保険も控除されていると思います。
一定要件に満たない場合は雇用保険の加入義務はないとお伝えしましたが、今現在、または過去の企業で1日8時間、週40時間の労働をしていたならば、雇用保険の加入は必須になります。
転職活動をする20代の求職者は、正社員経験があっての正社員としての転職活動を想定しているでしょうから、まず間違いなくこれまで雇用保険の加入はしており、20代の転職希望者も毎月雇用保険料を支払っていると思って良いです。
雇用保険は、保険で貯蓄型の保険ではないので、もし転職希望者に雇用保険が想定する保険利用事態がなければ、それは毎月の掛け捨てになります。
今、偉そうに雇用保険の話をしている私自身も20代の頃に、給料明細を見て、毎月保険料を払うのは嫌だとかなり知識不足の時代がありましたが、労働者である以上加入は必須です。
この雇用保険受給制度、基本的に誰も教えてくれません。
毎月雇用保険料を支払っていて、雇用保険を利用する事態が自分にあったとしても、雇用保険の内容を知らなければ単なる保険料の垂れ流しで終わります。
雇用保険はハローワークが管轄しています。受給するためには退職した企業から離職証明書を発行してもらい、その書類を持参して自宅近くのハローワークに出向いてください。
ここで注意点ですが、手続きを完了すると明日から失業手当が支給され、しかも、離職している期間は半永久的に支給される・・・のではありません!!!
失業手当には、離職理由による給付制限期間があります。
普通の自己都合による離職の場合は、離職した理由は自分にあるということで、転職意欲を低下させないために3カ月程度の給付制限を設けて、その期間が終わってから給付が開始されます。
「3カ月のうちに貯金が底をつく!」と心を乱している20代の求職者もいるでしょう。
給付制限期間を受けずに、失業手当が支給されれば問題はないでしょう。
では、どのようにするかと言いますと、離職証明書を企業から発行されるときに、離職理由の欄に自己都合ではなく企業側の責任(解雇など大袈裟な理由はダメですし、嘘もだめです。)にしてもらうのです。
例えば、残業時間が多くてその企業の仕事についていけないといった理由です。
そうすることで、特定理由離職者という括りになり支給制限期間なく失業手当を受給することができます。
ただし、雇用保険は永久に求職者の無職期間の面倒を見てくれるわけではありません。
支給される額もざっくり言いますとそれまで在籍していた企業で得ていた給料を30で割って、1日単価が算出され、さらに1日単価の3分の2程度だと思ってください。
支給期間は、所定給付日数ということで、それまで20代の求職者が企業に在籍していた期間、つまり、この期間が雇用保険制度に保険料を支払い貢献していた期間ということになりますが、その加入期間に応じて異なります。
20代の求職者の場合、恐らく90日が限度だと思います。
90日は支給されますから、支給されなくなった後は、貯金さえあればそれで生活をして通算期間5カ月か6カ月ぐらいは何とか食いつなぐことができます。今の転職市場は20代の求職者であれば6カ月あれば十分、とりあえずの転職ではない転職をすることも可能です。
傷病手当金という制度もある
傷病手当金とという制度をご存知でしょうか。
傷病手当金は、健康保険制度の1つです。
健康保険の目的は業務上や通勤上以外の傷病などで働けなくなった場合、休業をしなければならない場合に給料補填として支給されるものです。
金額は雇用保険の基本手当とほぼ同額ですが、支給期間が最大1年半と結構長いです。
ただ、支給を受けるためには傷病などにより業務に従事することができず、休業していることが条件です。
退職しなければ精神的におかしくなるという状態は、もうその段階で精神的な傷病を発症していると近頃の医師は判断しています。
ですので、この状況になったらまず病院に行き、診察を受け医師と相談した上で休業という対応も想定できます。
傷病手当金は医師の診断が必要になりますので、医師の意見を記載した申請書を企業に提出してください。
ポイントは、退職前に絶対にその傷病により3日間会社を休んでいるということです。(誤解をまねく書き方になってしまいましたが、受給目的でわざと休むことは絶対にやめましょう)
それがなければ、退職後に継続して傷病手当金を受給することはできません。
健康保険制度上、傷病手当金を受給している期間は内職などの軽微な業務は良いとしていますし、その間に転職活動をしてはいけないというルールも存在しません。
私の個人的な意見としては、むしろ受給期間中に転職活動をして早く社会復帰して欲しいと思っているのではないかと思うのです。
なぜかと言いますと健康保険制度は財政均衡が厳しい状況にあるため、保険料は必要ですがなるべく支出は減らしたいと思っている訳ですから。
このように、失業手当や傷病手当金といった公にも認められる制度を活用することで無職期間の不安を消し、ある程度余裕ある期間のなかで転職活動に専念することができるのです。
失業手当や傷病手当金は、前提が自己都合などではないやむを得ない理由を持っていることです。
虚偽はいけませんから、この2つを利用できる20代の求職者はある程度限られると思います。今の時代はブラック企業に勤務して仕事についていけない、精神的な病を抱えているといったような事は増えてきていますので、該当する人は我慢して在籍して転職活動をするよりも、一気に退職して転職活動をした方が状況は良くなると思います。
離職期間が長いと企業からはマイナス評価
最後に、企業から見た転職希望者に関して書きたいと思います。
今の転職市場は、求職者が現職に在籍した状態で転職先が決まってから退職、その後新たな会社へ転職するという流れが普通です。
その為、選考する側の企業は無職で転職活動をしている転職希望者をかなり珍しいと思いますし、かなりの事情があると推測します。
基本的に、多くの企業は転職活動期間は3カ月程度と想定しています。
3カ月を超えている場合で6カ月以内であれば、まだ良いのですがそれ以上の期間になると企業は求職者をこう思います。
「どの会社からも内定がもらえない求職者」
書類選考段階でこの印象を持たれると基本的に書類選考は見送りになりますし、書類選考を通過したとしてもイメージ先行で面接を行いますので、余程のリカバリーがない限りその面接も見送りになるはずです。
先にも書きましたが、転職活動には答えがありませんしいつ決まるという保証もありません。
求職者は企業に評価を受けて内定を勝ち取る訳ですから、無職期間が長くなればなるだけ企業からの評価もマイナスになり、その後の転職活動に不利に働きます。こういった理由からも、無職状態での転職活動はおすすめできないのです。(病やケガなど特別な理由を除きます。)
20代の求職者は、今後の人生も考えて転職活動を重く受け止め、基本路線は現職に在籍しながら転職活動をして、とりあえず転職だけは避けましょう。