どのような求職者であっても、今行っている転職活動で失敗を目的にしている人はいないでしょう。
転職とは、単純に仕事や職場を変えるということにとどまらず、人生の大きなターニングポイントにもなる人生における大きな行事です。
転職活動で失敗すると、仕事面においても不遇な状況になりますし、人生面でも大きな損失を伴うリスクがあります。
『人生の乗り換え切符はそう簡単に手に入らない』という言葉を聞いたことはありますか?
転職にも同じことが言えて、一度、退職した企業に出戻りすることはほぼ不可能ですし、転職してしまうと、退職することはできても、キャリアに傷がついた状態で再度、転職活動をしなければならないのです。
ですので、転職活動は絶対に失敗してはいけないということを肝に銘じておいてください。
ある程度、社会人経験がある30代以降の求職者に関しては、考え方もしっかりしていて大丈夫だと思いますが、20代の求職者に関しては、はたから見て『失敗しようとして転職活動をしているのではないか?』と疑問に思うような言動や行動を取る人がいます。
今回は、転職失敗のリスクを抱える確率が高い20代の求職者に向けて、転職活動の失敗とは何か、また、転職活動で失敗しないためには何が必要なのかについてご紹介したいと思います。
20代で企業選びすること自体かなり難易度が高い!
そもそも論の話になりますが、まだ社会人経験が浅く企業の情報をまだ熟知していない20代の求職者が企業を自分で選ぶという行為自体が私としては無理があると思っています。
私は、これまで転職エージェントとして多くの20代の求職者を見てきましたし、企業の人事としても多くの面接を経験してきました。
このような経験を持つ私だから言えることだと思いますが、ある程度のビジネス経験を持ち、しかも、企業の情報を把握している人でなければ企業選びは難しいと思っています。
しかし、今の転職市場は20代の求職者の転職は一つのブームになっています。
多くの20代の求職者が転職活動をしていますし、多くの企業が20代の求職者の中途採用を行っています。
転職市場の動向にある意味乗せられて転職活動をして、その活動のなかで自分の基準だけで企業を選ぶ20代の求職者は転職活動の失敗となるリスクがあります。
私が今回、転職活動の失敗は人生にも大きな影響を与えると伝えていますが、軽々しく受け取らず、本気でこのリスクを考えて欲しいのです。
20代で転職をして失敗した求職者を私は知っていますので、その人たちがその後、どのような人生やビジネスを送ったか具体的にお伝えすることで、よりリアルに感じることができると思います。
転職活動のプロになってしまった求職者
転職活動をする求職者は、だれしも転職活動の当事者であることは間違いないのですが、転職活動は人生でそう何度も行うようなことではないので、転職活動に慣れている、転職活動のプロであるという求職者はあまりいないでしょう。
むしろ、いるとすれば、それは自慢できることではないですし、人生の反省すべきことです。
ある求職者の転職支援を転職エージェントとして行ったのですが、その求職者は、新卒で不動産業界の営業職として入社しました。
しかし、不動産業界の営業職と言えば、かなりのハードワークで離職率も高く、その求職者も例外なくハードワークについていけず、1年少しで退職しようと考え、私が属していた転職エージェントに登録面談にきました。
その求職者は、『今すぐにでも退職したい』という考えを持っていたのですが、一人暮らしでしたし、貯金額を聞くとほぼゼロに近い状態でしたので、絶対に退職せずに在職したまま転職活動をすること勧めました。
転職活動自体は退職することなく行ってくれたのですが、『今すぐにでもやめたい』という気持ちは変わることはなく、私がいくら転職活動を本格的に行う前に自己分析などを行い転職軸を設定しましょうと言っても、すぐに求人の紹介をして欲しいということでした。
転職エージェントは、求職者の希望に沿う転職支援が基本になりますので、求職者がすぐに求人を紹介して欲しいと希望したならばそれを拒否することはありません。
私も例外なくすぐに紹介できる求人をその求職者に紹介しました。
通常、複数の求人を紹介された場合、求職者は一旦持ち帰るなどして余程、希望にマッチしない限りはその場で応募手続きを希望することはありませんが、『今すぐにでもやめたい』というその求職者は、すべての求人に対してその場で応募するということでした。
早速、応募手続きをし、紹介したいくつかの求人の中から、ある企業の内定をもらっています。
転職活動の開始から約1カ月のことです。
その1カ月の間に私としては内定が出た企業よりも良い環境、条件の選考中の企業がありましたが、『今すぐにでもやめたい』というその求職者は、選考中の企業を辞退し、内定が出たらすぐに内定承諾し、現職の退職をしています。
ここまでの説明で何となく分かると思いますが、その求職者は求人紹介から内定承諾までほとんど考え無しです。
感覚的には、とりあえず会社を変えたいから内定が出た企業だったらどこでも良いから転職するという感じでしょう。
転職とはゴールではなく目標でもありません。
あくまで、自分のビジネスマンとしてのキャリアを形成するための手段に過ぎないのです。
今、エピソードとしてご紹介している求職者も含めて20代の求職者は、転職をゴールと考えたり、転職を簡単に考え過ぎる傾向があります。
このスタンスを持っている限り、20代の求職者のなかでどれだけ優れた能力やスキルを持っていても良い転職はできませんし、転職活動の失敗となることの方が明らかに多いです。
『今すぐにでもやめたい』求職者は・・・
内定承諾した企業に無事に転職することができたというところまで良いとしても、転職後にその求職者はどうなったかと言いますと、転職後の数日は慣れない環境であり、『今すぐにでもやめたい』と思っていた前職から逃れることができたという達成感から在籍することはできましたが、3カ月で退職しています。
退職理由は、自分には興味がない業界であり職種であり、社風も合わないからという、『じゃあ何でその会社に転職したんだ!』と思ってしまう転職理由のオンパレードでした。
業界は転職する前に求人を見てだれでも分かります。
職種も求人に記載がありますからだれでも分かります。
社風も面接官を通してある程度のことは分かります。
急いで転職したこの求職者の退職理由は、すべて事前に知ることができ未然に防止することができた内容ばかりです。
転職エージェントとして転職支援した私からすると、『だから、あれだけ言ったのに・・・』という感想しかありません。
その求職者は、退職してしまっていましたから、無職の状態で私のところへまた転職支援の依頼で登録しにきました。
貯金額もほぼゼロ、しかも無職という状態で、かつ、20代の若い年齢で次がすでに3社目です。
『今すぐにでもやめたい』ではなく、今度は、『早く職を見つけたい』に変わっていました。
転職エージェントとしては、20代の若い年齢で、無職であり、すでに次が3社目という段階で、紹介できる求人は減ります。
求職者からすると本来、憲法で認められている職業選択の自由を自分で制限してしまうということになります。
その求職者は結果的に転職することはできましたが、その時の転職活動でも『急ぎ』を優先し、ゆとりない経済状況、精神状態でしたので自分が納得できる転職はできず、転職先もすぐに退職しています。
そのまた次の転職支援もしたのですが、年齢の割に職歴が多くなり過ぎていたため、残念ながら紹介できる求人はなく、その求職者は、結果的にこれからキャリアを積まなければならない20代のうちからアルバイトとして生計を繋ぐという最悪の展開になっています。
アルバイトの時代も私にちょくちょく連絡があり状況を知っていましたが、アルバイトも転々としてしまい定職に就くことができなくなっています。
私が今回のエピソードで何を一番言いたいのかと言いますと、転職は癖や習慣になるということです。
一度も転職したことがない求職者は、初めての経験ですから緊張もあり不安もあるでしょう。
しかし、転職することができると、『あれ?転職って結構簡単にできるんだ!』と悪い意味で転職に前向きになったり、転職することに抵抗感をなくしてしまいます。
転職をキャリア形成ではなく、『嫌なことがあったら転職すればいいや』ぐらいの存在にしてしまいがちです。
この傾向は20代の求職者に本当に多く見られ、転職が癖になるまではまだましかもしれませんが、転職が癖から習慣に変わるともう終わりだと思ってください。
転職は何度もするようなことではなく、転職の前にまずは我慢や改善が必要です。
我慢したり、改善の提案をしてもダメなときの最終手段として転職があるのです。
我慢や改善の行動をする前からいきなり転職はあり得ない選択肢だと思ってください。
私は、20代の求職者に対して転職はしないようにと言っているのではありません。
転職を簡単に考えるのでなく、やるべきことをやってから転職をしましょうということです。
今の日本は転職ブームになっていますし、多くの転職エージェントが存在し、求職者からすると転職しやすい環境にあることは間違いないのですが、社会の流れだけに乗っかり自分の考えが定まらないなかで転職をしても良いことは一つもないと思ってください。
上司と相性が合わない・・・
今やっている職種がいまいち合わない・・・
やりたいことがな・・・
給料が安い・・・
このような思いは企業で働く人であればだれでも大なり小なり持っていますし、このような思いは次の転職先でも普通に想定できることです。
その都度、そのような理由で転職を選択してしまってはいくら転職してもキリがありません。
20代のうちから我慢や改善の前に転職を最優先の選択と考える思考を持つと30代以降の自分の人生に跳ね返ってきます。
30代以降は20代の我慢は比にならないぐらい我慢しなければならない状況になると考えてください。
転職活動をする前に自己分析の徹底!
20代の求職者が失敗しない転職活動をするために必要なことは自己分析です。
何より先に自己分析から着手してください。
30代以降の求職者であれば、自己分析をすることなくある程度、自分のことを理解できていて、その理解ある上で、自分が今後のキャリアをどうすべきかを考えることもできるでしょう。
20代の求職者は、30代以降の求職者のように自己分析なしに考えを定めることは難しいため、自己分析の徹底は転職活動で失敗しないための必須事項だと思ってください。
20代の求職者をたくさん見てきましたが、いかに自己分析ができているかどうかにより、転職活動の質も違いますし、転職活動の結果となる転職後の状況も変わっています。
自己分析とは何かということになりますが、自己分析とは、簡単に言えば自分を客観的に可視化し自分を知るということです。
具体的な自己分析のやり方は、自分が生まれてから現在に至るまで年表にします。
その時々にあった出来事を記入し、その上で、自分がどのような行動を取ったのか、そしてその結果どうなったのかをできるだけ具体的にします。
この工程を踏むことで、自分がどのような人間でどのようなことが得意なのか、不得意なのかを客観的に知ることができます。
今まで経験してきた仕事に関しても同様で、その仕事が本当に自分がやりたいことなのかどうかを自己分析の結果から判断することができ、それを転職での業界選び、企業選び、職種選びの軸に設定することができるのです。
正直なところ、1時間や2時間で対応することは不可能で、かなり手間のかかることですから面倒に感じるかもしれません。
しかしながら、自己分析をどこまでやったかにより、その後の転職含めた人生に大きな好影響を与えると思えば、大した手間に感じないのではないかと思うのです。
20代の求職者は、手間暇かけて精度の高い自己分析を行い、客観的に自分を知った上で転職活動を始めた方が良いと思います。
恐らく、これまでの人生で自己分析ほど自分の人生を直視して振り返ることはないと思いますので絶好の機会だと思います。
自己分析をより確実なものにするためには?
自己分析は過去の自分を客観的に振り返ることができるのですが、とは言え、自分のことですので客観的になっているかどうか不安だという求職者もいるでしょう。
そのようなとき、転職エージェントを利用してください。
転職エージェントにはキャリアアドバイザーがおり、登録面談などでコンサルティングを行ってくれます。
その際に、自分で作成した自己分析の結果を参考資料として提出するとキャリアアドバイザーはそれを見ながら求職者の話に対応することができるようになります。
キャリアアドバイザーからも自分の自己分析の結果で感じた自分の転職軸が間違えていないとお墨付きがあれば、その後の転職活動も自信を持って臨むことができるのではないでしょうか。
自己分析がしっかりしていると、こんなリスクマネジメントをすることができるという話もします。
20代の求職者は、自己分析をしないなかで転職軸が定まっていると自分で思っていても、転職活動中に自分が選考を受ける企業に対して、最初は軽い気持ちで面接を受けても、面接で面接官から高い評価を受けたりすると、テンションやモチベーションが上がって、あまり興味がなかったその企業に転職熱が強まることがあります。
この現象は、結果的には転職軸が定まっていないということが言えるのですが、自己分析をすると、転職活動中のこのようなときにも自分の軸がしっかりとしている分、高い評価は高い評価として考え、自分の軸とそれは別であるという割り切りをすることができます。
転職活動中の軸のブレは、その後のキャリアビジョンのズレにも繋がりますから、かなりリスクがあります。
このようなリスクを回避するためには、やはり自己分析が大事です。
転職活動中はいろいろな誘惑などがありますので、20代の求職者はそれに乗せられてしまうことも多いので、気を付けるだけではなく、自己分析をして未然に防止するようにしましょう。
転職が成功するか失敗するかは天と地の差がある
転職とは人生を左右する大きなイベントです。
ビジネスマンであれば、1日のうち大半を仕事に費やすはずです。
通勤時間や身支度時間も含めると1日の半分以上を仕事に費やす人もいるのではないでしょうか。
つまり、転職後の仕事の好不調はそのまま人生に直結すると言っても過言ではないということになります。
私は多くの求職者を転職エージェントや人事として見てきましたが、20代の求職者ほど転職活動を慎重にやってほしいと思う年代はありませんでした。
ビジネスマンの出だしである20代で躓くとそう簡単にリカバリーすることはできません。
たった1回の転職失敗が人生を負の連鎖にしてしまう危険性があるということを理解しておいてください。
逆に転職成功すると人生も楽しくなるでしょうし、本当に転職は人生の分かれ道と言っても過言ではないのです。
是非、このことを肝に銘じて頂き20代の求職者は転職活動を頑張ってください!